下ノ廊下 1日目の3(温泉編)

さっそく宿泊受付を済ませます。
ご主人が出てきて「食事はどうする?」
朝食は何時からですか?
「6時」
なるほど、さっき志合谷の手前で会ったおじさんたちの言っていた通りだ。じゃあお弁当にしてください。
「うん、2食で朝食弁当ね」


ところで、このコース上にある山小屋は、この阿曽原温泉小屋ただ1軒。
必然的に宿泊者が集まることになります。
週末ともなれば大混雑で、1枚の布団に2人が寝ることも日常茶飯事だとか。
来る前からこのことが心配だったので、今夜は何人くらい泊まるのか聞いてみました。
「70人くらいかな」
あー、そんなもんですか。定員が50人だから大したことはなさそうだ。


阿曽原温泉小屋
阿曽原温泉小屋


部屋に案内されると、先に到着していた方が1人休んでいるところでした。
大阪から来たという初老の単独の方で、今朝黒部ダムを出てきて13時頃に到着したそうです。
すでに温泉にも入ってきた様子で「いい湯でしたよ」とのこと。
おっ、じゃあ私も早く入りたいですね〜。


その温泉、1時間ごとに男女交代で入る仕組みで、到着した時は女性の時間帯だったため、しばし小屋の前で待機します。
その間にも、黒部ダム方面からやってきたお客さんが続々と到着。
1人が「このへんってクマは出る?」と小屋のスタッフに聞いています。
「出ますね」と答えるスタッフに、ああ、やっぱりという顔のお客さん。


「ここまで来る途中にも獣の臭いがしたんだよね」
「ああ、それは多分サルですね」
「え、サルもいるんだ?」
黒部の森は何とも豊かな生態系のようです。


そうこうしているうちに男性の時間が近くなり、私と同じように待機していた他の男性陣が動き出しました。
小屋入口に並んでいるサンダル(クロックス)を見て、ひとりが「温泉までこれ履いていって大丈夫?」とスタッフに聞きます。
「行けないことはないですよ。元気な方なら…」と聞いた男性陣、ほとんどの人がサンダルをつっかけて出ていきました。
私は念のために自分の靴を履いて、先を行く皆さんを追いかけます。


温泉は、小屋の下のテント場にいったん出て、そこからさらに5〜10分ほど坂道を下っていったところ。
温泉から上がってくる女性客の皆さんと途中ですれ違いつつ下りていきます。


到着
到着


たどり着いた温泉は、浴槽が一つあるだけの簡素な作り。
脱衣所は浴槽脇のスノコで、あとは洗面器が5〜6個置いてあるだけです。
それでも、こんな山奥で温泉に入れるのだから贅沢なものです。しかも源泉掛け流し!
南アルプスじゃこうはいかないね」と、他の男性の1人。


黒部の山々を眺めながらのんびり浸かっていたら、最初は私を含めて5人ほどだったのが、後からだんだん他のお客さんがやってきて、20人くらいになりました。
さすがに狭くなってきたので、もうぼちぼちいいかな…と、30分ほどで上がることに。
服を着て、また小屋まで上がっていきますが、せっかく一風呂浴びた後なのにまた登らないといけないのはちょっと残念ですね。


小屋に戻り、特にすることもないので何となく食堂に来てみたところ、ご主人が出てきて何やらDVDのようなものをセットしています。
始まったのは、立山・黒部の四季を紹介したNHKの番組(を録画したもの)でした。
この小屋やご主人のことも紹介されています。
小屋が建っている場所は雪崩の巣窟のため、プレハブ造りのこの小屋は毎年冬になる前に解体し、翌年初夏にまた建て直すのですが、その様子も映っていました。
後で聞いたところでは、3年前に放送(撮影は4年前)されたものだそう。なかなか興味深かったです。