下ノ廊下 1日目の4(カレー編)

やがて夕食の時間。この日はカレーでした。
といっても、混雑する日はいつもカレーらしいのですが。
テーブルには副菜のコロッケ・ポテトサラダの皿が人数分並んでおり、カレーの皿をカウンターでめいめい受け取ってから席について食べるという流れ。


カレーライス・コロッケ・ポテトサラダ
カレーライス・コロッケ・ポテトサラダ


ご主人が「この米は私のウチの隣の農家から直接買ってます」と説明を始めます。
「今日はお客さんの人数が多いので食事の時間を分けていますが、制限時間内だったらカレーのお替わりは自由です」
制限時間というのは30分弱ほどです。
「ちなみに今までの最高記録は4杯半です。それではどうぞ!」
ご主人からの挑戦に応えるかのように半数くらいの方がお替わりをしていたようですが、私は早食いが苦手なのに加え、カレーを受け取る列に並んだのが最後だったため、残念ながらちょうど食べ終わった頃にタイムアップでお替わりできず。無念。
食べ終わった後の食器は自分でカウンターに下げることになりますが、スタッフから「カレーの皿と他の皿は重ねないでください」とお願いがありました。


食事が終わると、受付でお湯かお茶、または冷ましたお茶が水筒やペットボトルにもらえます。
受付に並んだ私に、「めでたく1人で布団1枚が確定だ」とご主人が笑いながら話しかけてきました。
到着の際に今夜のお客さんの数を尋ねたことを覚えていたのでしょうか。何にせよ、布団1枚使えて助かります。


ところで、今までで一番お客さんの多かった日って何人くらい入ったんですか?
218人」
ええっ? にひゃくじゅうはちにん!?
何でも、黒部峡谷鉄道が災害で不通になって入山ができなかった時期があり、待ちわびていた登山者が復旧後の週末だか休日だかにドバッと大挙して押し寄せたという話でした。
しかし、その日はいったいどんな恐ろしいことになっていたのやら…。


さて、今夜の宿泊は最高記録の3分の1ほど。
定員(部屋に入る人数)が50人、では残りはどうするかというと、食堂のテーブルをたたんでそこに布団を敷くのです。
スタッフが総出で片付けと布団敷きにかかり、さっきまでみんながカレーを食べていたスペースは、あっという間に寝室になりました。


というわけで、もう寝る用意は完璧なのですが、おかみさんによれば、まだ到着していないお客さんが2人いるといいます。
暗くなっても小屋に着かないという登山者が時々いて、人見平の関西電力宿舎から「今こっちにいるよ」と連絡があり、迎えに行くこともあるのだとか。
もちろんドタキャンの可能性もあるのですが「予約の電話があったのが2日前だから、来るとは思うけどね」と、ご主人。
結局この2人のお客さんが無事到着できたのかどうかは分かりませんが、まあ特に騒ぎになってはいなかったので、たぶん着いたんでしょう。


時刻は20時を回り、同室の皆さんはもうほとんどが休んでいます。
しかし、隣の部屋では会話が途切れる様子がありません。
大阪方面から来たツアーのお客さんたちらしいのですが、消灯時刻の21時までしゃべり続けるつもりなのかと、少々辟易しながら横になっていました。


やがて、こちらの部屋で寝ていたひとりの男性が、ついにブチ切れた様子で隣室に抗議を始めました。
「おいもう静かにしろよ! 何時だと思ってるんだ!」
すると、向こうからも「消灯は9時や!」と言い返してきます。
こちらの部屋の男性も負けておらず、言い合いになってしまいました。


「消灯は9時でも、マナーってもんがあるだろうが! みんな明日早いんだぞ!」
「そないな言い方があるかいな!」
「とにかく静かにしろよ!」
「お互いや!」
もう、頼むからいいかげんにしてくれよ…。


それでも、何とか双方とも静まり、みんな眠りにつくことができました。やれやれ。


就寝時間
就寝時間


翌日に続く。