下ノ廊下 2日目の5(帰宅編)

トンネル入口に貼り出されていた案内図に従い、トンネルに入ってトロリーバス乗り場へ。
…と思ったのですが、予定より早く着いたので、せっかくだからすぐ帰らずにちょこっとダム見学でもしていこうと、ダム展望台に出ることにしました。
乗り場への通路とは反対側の階段を上って展望台を目指します。
ダムに着いてもまだ登るのか…という気もしないではありませんが、まあ何事もなく無事に着いたんだしいいじゃないか、ということにしておきましょう。


220段の階段の上に出て、ダムを見下ろします。
さすがにデカい…。


黒部ダム
黒部ダム


右を見れば、今まで歩いてきた谷が奥へと続いています。
あの方から30km歩いてきたんだなあと思うと感慨もひとしお。


展望台から階段を下り、ダム堤防上の道路へ。
さすがに私のような登山者はまったくおらず、一般の観光客だらけでした。
しかも韓国語や中国語が多く飛び交っている。ツアー客なんでしょうかね。


一通り見て回った後で、それじゃぼちぼち帰るかな、と、トロリーバストンネル内に戻ることに。
切符売り場で扇沢行きの切符を求め、待合所に出ると、すでにバスを待つ行列ができています。


何じゃこりゃ、と私も列に並ぶものの、改札(券面のバーコードを機械で読み取る方式。進んでる!)を通ってバスに乗り込むと、目の前で座席がすべて埋まってしまいました。
まさかの立ち席…。
まあ、そんなに長く乗ってるわけじゃないので我慢はできるのですが。


乗車
乗車


このバスは架線からの電気でモーターを動かして走っているので、音が電車そっくり。
ずっとトンネル内を通るということもあって、雰囲気は地下鉄に近いものがあります。


途中、富山県・長野県の県境や、破砕帯(地下水の多い軟弱地盤で工事の際に困難をきわめた箇所)のところではトンネルの壁面に標識が出ていましたが、立っているのであまりよく見えないまま通過。


15分くらいの乗車時間で長野県側の扇沢に到着。
バスを降りたところが展望台のような広い場所になっていますが、真っ白にガスっていて景色は何も見えません。


ここからJRの信濃大町駅までの路線バスに乗り換えるので、30分ほどの待ち時間の間に下山連絡をしようと携帯を開くと、画面に留守電のアイコンが。
さっそく聞いてみると…


「こちらは富山県警山岳警備隊の○○といいます。
あなたがメールで提出された登山計画書についてお聞きしたいことがありますので、山岳警備隊までお電話いただけないでしょうか。
番号は…」


えっ、聞きたいことっていったい何だろう。
計画書に記入漏れや不備があったんだろうか。
それとも「こんな甘甘の計画で下ノ廊下なんぞに行こうってのか?ああん?」なんて怒られたりするんだろうか。ひぃぃっっ!
考えこんでいるうちにバスがやってきたので、とりあえず乗り込みました。


先ほどのトロリーバスの乗客はほとんどがツアーでやってきていた団体客だった様子で、駐車場で待機していた観光バスに続々と吸い込まれて発車していったため、この路線バスの乗客は10人程度。
扇沢から30分ほどで、すっかり暗くなった信濃大町駅前に到着しました。
ふーっ、ようやく人里に戻ってきた。


さっそく山岳警備隊に電話。
18時を回っていたので、電話がつながるかなと少し心配でしたが、ちゃんと係の人が出ました。
あのー、登山計画書の件でお電話をいただいた者ですが。
「ああ、あなたですね」
向こうもすぐに分かったようです。


「実は、メールで送っていただいた登山計画書が…」
はい…?


「…文字化けしていまして」


…文字化け…ですか…?
「そうなんです」


なーんだ、と、一気に緊張が解けました。


「最初から数行ほどは問題ないんですが、その後が化けてしまっていて、ところどころ『欅平』といった文字が数か所分かる程度なんです」


そうかあ、無謀な計画だとか怒られていたわけじゃなかったんだ。よかったよかった。一安心。
…あ、いや、もし万が一のことが起こっていた時のことを考えると安心すべきではないですね。
もちろん、そんなことは電話口では言わず、係の方の話を聞きます。


「次回からは余裕を持って計画書を提出してもらえるようお願いします。
それから、今回の計画書はワードのファイルでしたが、他のフォーマットでも構いませんので」


今回は、富山県警サイトの「登山」のコーナーに置いてあるファイル(リッチテキスト形式)をダウンロードして、中身を記入して送ったのですが、PDFなど他の形式や、またファックスでも大丈夫だということです。
結構融通を利かせてもらえるんですね。当たり前といえば当たり前かもしれませんが。


というわけで、下山の報告も兼ねた電話は終了。
電車の時間までまだ余裕があるので、駅前の土産物屋に入ってみることに。


背中のザックを見た店のおばちゃんが「山登りでもされてきたのかしら?」と話しかけてきました。
ええ、実はこういうルートを歩いてきまして…と話すと、おばちゃん「あらまー」と吃驚。
「クマには遭わなかった?」
いやあ、もし遭ってたら今頃ここにいませんからね。


おばちゃんトークに引き込まれて野沢菜など求めてから電車に乗り、松本へ。
1時間ほどで到着した松本の街は、2日の間山中を歩いてきた目にはおそろしく大都会に映りました。…いや、実際に都会なんでしょうけど。


松本バスターミナル
松本バスターミナル


駅前のバスターミナルから高速バスに乗り込み、一路帰宅の途に。
いやー、いろいろあったけど楽しかった! また行きたいものです。