下ノ廊下 2日目の2(十字峡編)

エメラルドグリーンの綺麗なダム湖を右に見ながら、車道を進んでいきます。
途中からまたしてもトンネルに入りますが、ここは車道なので頭上や足下の心配はなし。
トンネルの中間地点あたりからは右側に明かり取りが大きく開き、トンネルというよりスノーシェルター風です。


トンネルを抜けてしばらくすると広場に出ました。
奥には何やらオレンジ色の立て札が立っており、その脇からコンクリートの階段が下へ続いています。
立て札には何が書いてあるのかと思って近づいてみると、何のことはない、ただの板でした。
あるいはもしかすると、昔は何か書いてあったけど色あせてしまったとか、何かある時にだけ貼り紙でもするためのものなのかもしれません。


階段を下り、またすぐに別の階段を上っていくと、東谷吊橋が現れました。
手前がやはり広場になっていたので、少し休んでから吊橋を渡ります。
足下は足幅よりちょっと広い程度の板が2枚渡してあるだけなので、若干心もとない。
おまけに、吊橋なので当たり前なのですが、揺れること揺れること。
中央部に近づくにつれてどんどん沈み込みが激しくなり、両側のワイヤーをしっかり掴みながら進むことになります。
が、そんなに怖いというほどのこともなく(高所恐怖症でなくてよかった)、サクッと渡り終えました。


渡った先からすぐ登り。
頭の上にはブーンと低い音で唸る送電線が走っていて、その先は対岸の崖へと続いています。
そう、この送電線は黒四発電所から来ているんですね。
景観上の問題、そして冬期の雪害から施設を守るために発電所は地下に作られていて、電線は山腹に開けられた出口から外に出てきているのです。


黒四発電所送電線出口
黒四発電所送電線出口


送電線出口がほぼ目線の高さにくる頃になって、道はまた平坦になりました。
しかし、昨日のような桟道が出てきたり、道幅自体も狭くなってきたりして、いよいよおいでなすったという感があります。


S字峡、作廊谷合流点(ここの対岸の崖の上に関電の宿舎があるらしいのだが確認できず)、半月峡などのポイントを過ぎ、十字峡に近づいてきました。
先ほどと同じような吊橋を渡ります。
橋の下は剣沢という流れで、かなりの水量があり、本流に流れ込む水が轟々と音をたてています。


橋を渡り、数段ほどのハシゴを上ると、傍らにちょっとした広場がありました。
中央には焚き火らしき跡が残っています。ここでテントを張る人がいるんでしょうか。


この広場の奥から川の近くまで出る道があると聞いていたので、数分ほど休んでから下りていくことにしました。
ザックは広場に置いて空身で向かいます。
林の中の道は狭く急で、しかも滑りやすいので注意して進んでいくと、5分ほどで大きな岩が現れました。
岩の上に上ると、目の前には十字峡の一大パノラマが。


視界の手前から奥へ向かって流れる黒部川に、左側から先ほどの剣沢が、右側からは棒小屋沢が滝となって流れ込み、十字を形づくっています。
剣沢の水の音が谷間に響き渡り、視覚にも聴覚にも大迫力で訴えかけてくる自然の驚異。
まさに下ノ廊下のハイライトです。


見晴台より
見晴台より


もうしばらくボーッとのんびり眺めていたかったのですが、何しろまだ先は長い、5分ほど写真を撮りまくった後で上に戻ることにしました。
この岩からさらにもう一段下へロープ伝いに下りることもできるものの、それはまた次回ということにしておきます。


広場に戻り、再びザックを背負って出発しようとすると、上に誰かいるのに気付きました。
追いついてくる人はいないはずなので「えっ? もう黒部ダム方面からの人が来たの?」と内心驚いて近づいてみると、作業服姿の人が2名休憩しているところでした。
なるほど、作業服を着ているということは人見平から来た関電職員の人かな。それとも歩道整備の業者さんだろうか。
挨拶をして先へ。


十字峡の広場からほどなくして、右の山側から沢の水が流れてきているポイントがありました。
ほとんど滝のような流れです。
滑らないよう足下に気をつけながら渡ったのですが、右足の膝から下がすっかり濡れてしまいました。
しかもその少し先にも同じような徒渉点があり、こういう時スパッツがあれば便利だなあ…と思いつつ通過。


崩壊地を通過、歩道補修用の資材置き場や谷底の残雪などを横目に見ながら進むと、「白竜峡」の標識が現れました。
さあここからが核心部だ、と少し緊張が走ります。