下ノ廊下 2日目の4(ラストスパート編)

このあたりで、デジカメのバッテリー残量が残りわずかという表示が出るようになってきました。
何しろ昨日だけでも200枚以上撮っていて、満充電の状態で家から持ってきたバッテリーが、小屋では3分の2の残量になっていたくらいなのですが、今日も今日とて朝からバシバシとシャッターを切っており、仙人谷ダムを出るあたりですでに残量3分の1を示していたのです。
景色が単調になってきたのもあって写真を撮るペースを若干落とし、撮る際もなるべくサッと撮ってすぐにスイッチオフするようにし「節電」に務めますが、果たして最後まで持つだろうか。


新越沢合流点、鳴沢小沢などのポイントを通過。
単調な景色のせいか、歩き通しだった(といってもさっき黒部別山谷で休んでいるのですが)せいか、またも少し疲労を感じるようになってきました。
まだ昼食分の食料が少し残っているので、内蔵助谷出合で休憩することにし、なおも先へ進みます。


しかし、その内蔵助谷がなかなか見えてきません。
時計とここまでのコースタイムで判断するに、12時半くらいには着けるかと思っていたのですが、12時45分になっても到着できません。
精神的な疲れもあって、もうここでいいや!と、谷を見下ろす開けたところでザックを下ろします。


しかし、開けているということは吹きさらしでもあるということなので、しばらく座り込んでいるうちに体が冷えてきてしまいました。
これはいかんと防寒着のフリースを出します。
ここで休んだのはちょっと失敗だったな。


ここでも20分ほどの大休止をとった後でリスタート。
歩き出して10分弱ほどで、木橋が見えてきました。
あっ、あそこが内蔵助谷か! さっきの場所からもう10分だけ歩けばよかったのか…。


谷に架かる木橋を渡ってすぐ、右側より来る真砂沢方面からの道と合流。
ここから黒部ダムまでは一般コースで特に問題はないと聞いていたので、さらに気が楽になります。


しばらく歩くと、「平成22年9月25日にこの先数百mの区間で大きな落石がありました」という立て札がありました。
具体的な日付(しかも今年)が書いてあると不気味だなあ。
気をつけながら通行することにします。


落石のあった区間を無事に通過すると、川の対岸が人工護岸になっているのが見えてきました。
さらに少し先まで行くと、この日朝に仙人谷ダムの先で歩いてきたような車道が通っています。
さらに、何やら向こう岸から唸り声が聞こえるようになり、しばらくしてその車道を工事用の重機がゆっくり走ってくるのが目に入りました。
黒部ダムも近いようです。


そしてその通り、さらに5分も歩くと、木々の間から高さ186mのダムがついに見えてきました。


ダムが見えてきた
ダムが見えてきた


対岸へ渡る橋に差しかかると同時に、向こうから登山者が1人歩いてくるのを発見。
最後に対向者とすれ違ったのは内蔵助谷の手前(それでも阿曽原を目指すにしては時間的にだいぶ遅いタイミングですが)だったので、こんな場所ですれ違いがあるとは思ってもみず、ちょっと吃驚。
この人はいったいどうするつもりなんだ?と、挨拶ついでに「どちらまで?」と聞くと「内蔵助谷」との答えでした。
ああなるほど、あそこでテントを張るのね。
「お気をつけて」と声をかけて別れます。


橋に出て、ダムを下から眺めたところを写真に収めようとすると、ついにデジカメのバッテリーが切れてしまいました。
だましだまし使ってきたのですが、完全にお亡くなりになってしまったようです。無念。
仕方なく、昨日の朝から電源を切ってザックにしまっていた携帯電話を取り出し、以降はこのカメラで撮ることにします。
電源を入れると、いきなりメールが入ってきました。なんと携帯が通じる!
まあ、考えてみたら黒部ダムは観光地なんだから携帯が使えても不思議ではないのですが、ずっと圏外の山の中を歩いてきて突然電波が入るようになるというのも一種奇妙な感覚ですね。


橋の向こうからぞろぞろと渡ってくる、ヘルメットに作業服姿の工事関係者の皆さんとすれ違いつつ、ダムを目指して最後の登りにかかります。
最初は緩やかな道だったのですが、次第に急な坂になってきました。
あと少しだからと、自分を奮い立たせて進んでいきます。


紅葉の進んでいる山々を眺めながら、ダム下の橋から登ること30分弱、ようやく広い道に出て傾斜も再び緩やかになりました。
ここからさらに5分ばかり行くと、トンネルの入口のようなものが見えてきます。
おっ、もしかしてあれがゴール地点じゃないか?


果たしてその通り、見えていたトンネルは関電トロリーバス乗り場への入口でした。
到着時刻、14時50分。


トロリーバストンネル入口
トロリーバストンネル入口