下ノ廊下 1日目の1(列車編)

朝6時前、ホテルをチェックアウトして富山地方鉄道新魚津駅へ。
6時ちょうど発の宇奈月温泉行きに乗り込んだのは私だけでした。
運転士さんの「おはようございます」という挨拶に思わず返事をして、席に座ります。


途中の舌山駅で、同じくザックをかついだ中年女性の2人組が乗り込んできました。
この駅は高速バスの黒部バス停最寄り駅なので(とはいえ徒歩で30分くらいかかるようですが)、時間的に考えると夜行のバスで着いて、その足で駅まで来たのでしょうか。
登山者風なので「これは同業者かなあ」と思っていましたが、まさにその通り、この後欅平まで一緒になるのですが、それについてはまた後ほど。


宇奈月温泉駅に到着し、駅を出て5〜10分ほど先にある黒部峡谷鉄道宇奈月駅まで歩きます。
宇奈月駅では、まだ朝の7時というのに大量の人が列車を待っていました。
しかし、そのほとんどは観光客や登山者ではなく、作業服を着た人たち。
黒部峡谷鉄道はもともと関西電力のダムや発電所の工事のために敷かれた路線なので、今でも工事や保守のための関係者が多く利用していて、工事関係者しか乗れない専用列車も走っているくらいなのです。


その専用列車が2本続けて出た後で、ようやく一般客が乗れる列車の始発になるのですが、それまで時間があるので駅の中を見て回ることに。
待ち合いスペースの片隅に、「黒部峡谷に住むクマ」と題した剥製がガラスケースで飾ってありました。
そういえば、列車を待っている他の登山者の皆さんは、ほとんどがクマ除けの鈴やベルをザックにぶら下げています。
今年はクマ出没のニュースが多いこともあって、私も準備しておこうかと思っていたのですが、気に入ったものがなくて結局持ってこなかったのでした。
とにかく、この先本物に出会わないことを祈るしかありません。


始発列車の改札が始まりました。
列車はオープンエアのトロッコ車両と、普通の電車のようなタイプの車両の2種類がつながれているのですが、後者は別料金がかかるので、貧乏人の私はもちろんトロッコ車両を選択。
もちろん、雨風はしのげないので(今回雨は降りませんでしたが)寒くないようにしっかり着込んでおきます。
切符を買う時に渡された整理券に書いてある車両に乗り込むと、先ほどの女性2人組が先に座っていました。
その他の登山者は、どうやら他の車両のようです。


いよいよ出発
いよいよ出発


宇奈月駅を出た列車は、黒部川に沿ってゆっくりと上流へ向かい走っていきます。
普通の鉄道よりもレールの幅が細いので、カーブが急なこと急なこと。
直角に近いカーブもあって、思わず笑ってしまいました。


1時間10分ほどトロッコに揺られ、欅平駅に到着。
2本の列車を同時にさばくためなのか、ホームが異様に長い。しかも出口はホームの反対側にあるので、駅の外に出るまでに5分くらいかかりました。


駅前の広場からいよいよ今回のルートに入ることになります。
トイレなどを済ませて広場に出てくると、宇奈月から乗ってきた他の登山者の姿が見えません。
どうやら先に出ていってしまったようです。ちょっと心細くなってきました。


私も歩き出す準備をしているうち、どこからか例の女性2人組がひょっこり登場。
あっ、自分が最後じゃなかったんだ!良かったー!
また少し元気になって、2人よりも先に歩き出しました。時刻は9時14分。