屋久島・宮之浦岳縦走 3日目の3(白谷雲水峡編)

ここから辻峠までは40〜50分といったところですが、ずっと下ってきたのでここからの登り返しがきついらしい。
気合いを入れ直して再び出発しますが、やはりこの登りはきつかった。
道自体も思っていたより若干不明瞭で、ピンク色のテープを目印に登っていくことになります。悪天候の場合などは注意が必要になりそうですが、今日が快晴でよかった。


この道の途中でもシカが出てきて「ほー」と見入ったりして、多少の気晴らしになったりはしましたが、それでも厳しい登りであることには変わりない。
とにかく汗をかくので、Sさんは首に巻いているバンダナを水場で濡らしたり、私もタオルを絞ったりしながら進みます。


どうにかこうにか、1時間弱ほどで辻峠に到着。
エコツアーの参加者と思しき人たちが大勢でお弁当を広げていました。


ここでSさんと私はザックを置いて、絶好の展望スポットである太鼓岩まで、15分ほどの道をアタックすることに。
Iさんは残ってお留守番です。


太鼓岩までは空身な分、楽に登れるかと思っていましたが、やはりそれなりの急登でした。
私よりだいぶ若いSさん(初日の夜に淀川小屋で歳を聞いていた)はスイスイ登って行きますが、私はそれに置いて行かれまいとするのが精一杯。
もっと日頃からトレーニングしないといけません。
しかもツアーの人たちがガイドさんに先導されて後から登ってくるので、追いつかれまいというプレッシャーもかかり、しんどい登りではありました。


それでも、登りきった太鼓岩からの眺めは、まさに絶景でした。
目の前には屋久島の山々、見下ろせば木々とその間を流れる川の、ほぼ180度のパノラマが広がっています。
近くにいたガイドさんによると「太鼓岩でここまで晴れるということは滅多にない」とのこと。やはり台風一過のおかげなんでしょうかね。
ただ、さすがに縄文杉と違って時間的に景色を独り占めというわけにはいかず、他の登山者やツアー参加の人たちが後から入れかわりたちかわり登ってくるので、あまり長居せずに再び辻峠へ戻りました。


太鼓岩からの眺め2
太鼓岩からの眺め


辻峠からはもう2時間かそこらです。
屋久杉、足下を流れる水、それに苔むした岩という白谷雲水峡らしい景色の中を、どんどん下りていきます。
すれ違う人も登山者ではなく、軽装のハイカーばかりになってきました。
もっとも、道は岩もあれば水たまりもあり、木の根が飛び出しているところもありで、登山道であることには変わりありません。
そんな道であるにもかかわらず、ヒールの靴で登る人もいるらしい、とIさんが教えてくれました。
ここをヒールで登るってどんな感じなんでしょうか。着ぐるみでマラソンを走るようなものかな。


白谷小屋で休憩がてら水補給。
ここまで来ると「あともう少し」といった気分で、若干気も楽になってきました。
小屋から程なくして、くぐり杉を通過。
道の真ん中に生えている杉の木の根元に大きな穴が開いていて、その穴をくぐって通るというものですが、登山用のザックを背負っていると若干狭くて簡単に通れない。
この少し先で「原生林歩道」と「楠川歩道」の分岐になりますが、今回は時間の関係で近道の楠川歩道を進みます。


小屋から30分ほどでさつき吊橋を通過。
橋を渡ったところからは石畳の道になり、歩きやすい。
川沿いを歩き、双子のような二つの滝が見える場所で最後の休憩。後で調べると、おしどり滝というらしい。


バスの時刻表を取り出して眺めているSさんと「何時のバスに乗れるか」という話をします。
白谷雲水峡発のバスは16時10分が最終だと思っていたのですが、この期間は増発されていて、もう少し後から出る便もあるらしい。
いずれにしてもバスの時間には問題なさそうです。


ゆっくり休んでから出発し、10分もかからずにバス停前の広場に到着。
ついに2泊3日の縦走を完了!


それでも、バスがもうあと少しでやってくるという時間で、すでに多くの人がバスを待っており、我々も感慨にふける間もなく乗車の準備をしますが、出発時間ギリギリにやってきたバスに一番後から乗り込もうとしたものの、先に並んでいた人たちですでにほぼ満席状態。
結局、もう1本次のバスまで待つことにしました。


10分後のバスは比較的空いていて、我々3人のほかの乗客は5〜6人程度の観光客のみ。
宮之浦まで山道を下って行く間には、車窓から海も見えました。
運転手さんの話では、鹿児島も見えることがあるそうです。


バスの車窓より
バスの車窓より


30分ほどで、宮之浦のバス停に降り立ちました。


山での話はここで終わりですが、オマケとして次の日の日記で食料計画などメモしておきます。


*この日の行程(主な休憩地点とおおよその通過時間)
新高塚小屋(0700頃)→ 高塚小屋(0800頃)→ 縄文杉(0815頃)→〈自然観察路経由〉→ ウィルソン株(1030頃)→ 大株歩道入口(1120頃)→ 楠川分かれ(1240頃)→ 辻峠(1330頃)→ 太鼓岩(1345頃)→ 辻峠 → 白谷小屋(1445頃)→ 白谷雲水峡(1545頃)

屋久島・宮之浦岳縦走 3日目の2(どんどん下山編)

縄文杉を後にして下りて行くこと数十分ほど、さっそく登ってくる人たちの第一陣と出会いました。比較的軽装の男性2人組です。
「おはようございます」と挨拶を交わして通り過ぎます。


その後しばらくすると、徐々に登ってくる人が増えてきました。
登り優先のため、我々は横にどいて登る人たちを通してあげないといけません。
もっとも、道が狭いため、実際にはすれ違いができる場所まで我々が下りるのを相手が待っていてくれたという場面もたくさんありましたが。


そんな中、途中ですれ違ったガイドさんのひとりから「こっちの道を行きなよ」と声をかけられました。
見ると、通常のルートから左側へ分岐して登って行く道が。
「自然観察路」といって、ウィルソン株のところで再合流するルートなのだそうです。


「後からどんどん登ってくるから、すれ違うのを待っているとだいぶ時間をロスしてしまう。自然観察路のほうがいいよ」。
どうやら若干遠回りながら、登山者とほとんどすれ違わない道のよう。
「どうしようか」と3人で考えたものの、今日も若干出発が遅くなり、さらに白谷雲水峡に下りるので時間的にも余裕がそれほどないことから、いったんは通常のルートをそのまま下りて行きました。
しかし、さらにその先ですれ違ったガイドさんからも「今からでも引き返して自然観察路へ入ったほうがいいよ」と言われ、それならばと、数分ばかり戻って先ほどの分岐から自然観察路へ。


自然観察路は確かにまったく人が登ってこず、マイペースで下山ができるルートでした。
「でも何で“自然観察路”って言うんでしょうかねー?」とIさん。
確かに、それほど変わった植物がこっちのルートに生えてるとかいうわけでもない。
んー、もしかして通常ルートは人が多すぎて「人間観察路」になってしまっているから、こっちは比較的自然観察ができますよ、って意味じゃないですかね。
地形図には載っていない道ですが、目印になるピンク色のテープがあちこちにあって、よく注意していれば道迷いの心配はそれほどなさそうです(といっても一度道を外れかけましたが…。)


途中、高塚小屋で会ったガイドさんの一行とも再び行き会って「やっぱりこっちのほうへ来てたのか」なんて話をしつつ、無事通常ルートに合流。
しかし、ウィルソン株に到着してみると、その前ではすごい数の人が休憩中。
さらに、有名なハートマークの空を見るために株の中に入ろうとする人たちが行列を作っていて、相当時間がかかりそうです。
我々も一度は列に並んだものの、やはりこの先の予定のことを考えてあきらめました。
ハートマークはまた別の機会に…。


ウィルソン株
ウィルソン株


さて、ウィルソン株からさらに下りてゆくわけですが、このあたりになるともうすれ違う人はだいぶ少なくなりました。
それでも、ガイドさんに連れられた白髪の老夫婦が「もうバテた」と言いながらゆっくりと登ってきたりして、いろんな人がいるなあーと思わされます。
時間的にどこまで行けるか分からないけど、おじいちゃんがんばれ!


40分ほどで大株歩道入口に到着してトイレ休憩。
ここからトロッコ軌道の道です。


高塚小屋のガイドさん一行ともまたまた合流。
ガイドさんたちは荒川登山口へ下りて行くとのことで先に出発。ここでさよならとなりました。


ロッコ道は、線路の間に木道が敷いてあって非常に歩きやすいものの、ほとんど真っ平らな道がずっと続くことと、景色が若干単調なこともあって、別の意味で疲れる道ではありました。
こういうところこそトロッコに乗っていきたいのですが、残念ながらこのトロッコ軌道の営業は今年始めに廃止されてしまったとのこと。
…とは言っても、もともと一般の乗客を乗せるためのトロッコではなかったわけですが。
それでも、途中で道の補強工事をしている現場にトロッコ車両が停まっていて、資材の運搬用などにはまだまだ使われているようではありました(写真撮っておけばよかったと後から気付きました。失敗した)。


ロッコ道の途中、三代杉のところで補給のため休憩、さらにその少し先にある小杉谷山荘跡でトイレ休憩。
「小杉谷山荘跡」って名前だけ聞くとオシャレな感じで「別荘でも建ってたんでしょうかねー」などとSさんIさんと話していたのですが、後で調べたら別荘などではなく、山林関係者の宿舎だったようです。


そして、いよいよ楠川分かれに到着。
ここでトロッコ道と分かれ、白谷雲水峡方面へ向かうことになります。

屋久島・宮之浦岳縦走 3日目の1(縄文杉編)

JamesMaki2010-09-02

*前回までのあらすじ*
荒天の中とにかくも宮之浦岳登頂を果たし、何とか新高塚小屋まで下りてきた我々一行。
しかし、そこは夜の帝王ミッキーマウスヤクシマヒメネズミの跋扈する魔の空間であったのだ…。


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ネズミ騒動から一夜明け、朝5時頃に目が覚めました。
まずはさっそく朝食。


水を汲みに外へ出てみると、雨は完全に上がっています。


今日は縄文杉まで登ってくる大量の人となるべく行き会わないよう、早めに出発したかったのですが、結局SさんIさんと私が支度を整えて準備完了となったのは6時半を回ったあたりでした。
そこに2人組の登山者がひょっこり登場。
昨日白谷雲水峡から登ってきて高塚小屋に泊まり、これから宮之浦岳を目指すとのこと。我々とちょうど逆のルートですな。
昨日の雨で白谷雲水峡が増水していないかが心配だったので、状況を聞いてみると「それほどでもなかった」とのこと。
実際、増水していると通れなくなることもあり、その場合は荒川登山口へ下りなくてはならなくなるわけですが、今回はどうやら大丈夫そうです。


7時頃に出発。
SさんIさんと昨夜のネズミの話などしながら、どんどん下りていきます。
一応、昨日同様に雨具を着込んで小屋を出てきたのですが、木々の間から日が差してきて、雨具なんてまったく要らない状況。


1時間ほどで高塚小屋に到着し、トイレ休憩。
小屋の前で一服していた人と話をしながら、雨具をしまい込みます。
この人は4人ほどの客を連れていたガイドさんで、この後も下山中に何度か出くわすことになるのですが、その話は後ほど。


高塚小屋からしばらく下りると、何やら木の櫓のようなものが見えてきました。
「もしかしてあれが…」と近づいてみると、まさに思った通り、木製の大きな展望デッキの奥にひときわ大きな屋久杉の木が見えてきたではありませんか。


朝日を受けて輝く縄文杉は、まさに神々しいと呼ぶのがふさわしいほどの偉容でした。
まだ下から登ってくる観光客が誰もおらず、我々3人だけで眼前の巨木を独占です。
…まあ、厳密には先ほどのガイドさんたちも近くにいたのではありますが、細かいことは気にしない。


縄文杉の写真(大きすぎて数コマに分けないと全体が捉えられない)に続いて、これをバックに3人揃っての記念写真も撮ったのですが、後で確認すると、レンズが曇っていたのか全体的にボンヤリした画で、前の日の虹写真に引き続き残念無念…。

屋久島・宮之浦岳縦走 2日目の4(新高塚小屋編)

この日の宿泊者は15〜20名ほど。キャパから言えば十分余裕のある数です。
この小屋、宮之浦岳縄文杉の中間という位置にあるため人気があり、ゴールデンウィークやお盆などのピーク期には寝場所がすべて埋まり、通路にもシュラフが並び、入口の土間にも寝る人がいて、あげくには表のベンチで横になる人までいるとか…。
今回がそんな時期でなくて本当によかった。


夕食後、明日もあることだしと早めに就寝。
ところが、天気が天気だったにもかかわらず、うっかりしてシュラフの防水を忘れていたため、ところどころ濡れているではないですか。
仕方なくビニール袋を広げて濡れたところに敷き、上半身は防寒着を着てシュラフの外へ出すことに。
足の部分は大丈夫だったのがせめてもの救いでした。今度から気をつけよう。


周囲もみんな寝静まった頃、何やら近くで音がする。
コンビニの袋を探るようなガサゴソという音。いったい何だろうと思ったら、どうも自分のすぐ近くのようです。


この時になってようやく気付いたのですが、私はウッカリして淀川登山口で会った人の忠告を忘れていました。
ネズミがいるので食料はしまっておけというアレです。
もっとも食料は確かにザックにきちんとしまっていたのですが、ゴミ袋を出しっぱなしにしたままだったのでした。


そう、ガサゴソという音は、ゴミを入れておいたコンビニ袋にネズミが入り込んで、中を漁っていた音だったのです。
しかし、袋の中は本当にゴミしか入ってないし、しかも密封できる袋にまとめてあるから、そのうちあきらめるだろう…と思っていたのですが、このネズミがなかなかしぶとくて、少し静かになったと思ったらまたガサゴソ、ちょっと止まったら再びガサゴソという感じで、一向におとなしくなる様子がありません。
仕方なくライトを付けて、ゴミ袋をザックの中にしまい直すことに。
SさんIさんほか、近くで寝ていた方々、安眠を妨害してしまい本当にすみませんでした。


以下、3日目に続く。


*この日の行程(主な休憩地点とおおよその通過時刻)
淀川小屋(0830頃)→ 高盤岳展望所(1040頃)→ 小花之江河(1050頃)→ 花之江河(1105頃)→ 投石平 → 翁岳下 → 宮之浦岳(1410頃)→ 平石(1530頃)→ 新高塚小屋(1700頃)

屋久島・宮之浦岳縦走 2日目の3(夕刻下山編)

さて、登ってきたからには下りなければなりません。
しかも朝の出発がだいぶ遅い時間だったので、今夜泊まる新高塚小屋への到着もそれだけ遅れることになります。
経度のおかげで日没が遅い分、何とか明るいうちには着けそうですが、とにかく急いだほうがいいことには変わりない。


平石のあたりで少し空が晴れて、山間に虹がかかっています。
最初に見つけたIさんの声で立ち止まり、写真を撮っているうちに、すぐに虹は雲で隠れてしまいました。「一瞬でしたねー」とはIさんの弁。
虹は確かに綺麗だったのですが、この時の写真を後で見てみたら、レンズに水滴が付いていたようで画面の真ん中がボケていて残念無念…。


さらに下りていき、道が平坦になったあたりに差しかかると、行く手に1頭のシカが登場。
しばらく遠巻きに見守り、脇の木々の中に入っていくのを待って先へ進みますが、程なくして今度は親子連れのシカが現れました。
子どものほうは体をブルブル震わせて雨粒を払っています。
雨の中を長時間歩いてきた中、シカの姿にちょっと和みました。


下山中に見たシカ
下山中に見たシカ


人の頭のような大きな岩(坊主岩というらしい)を左手に眺めつつ、再び樹林帯の中へ入っていきます。
途中、第二展望台・第一展望台という標識のある場所を通りましたが、展望など望むべくもないのでそのまま通過。


樹林帯に戻ってきて足下がまた土になったので、またしてもぬかるみや水たまりが続々と登場してきます。
平坦地だから水が溜まるわけではありますが、登りもしんどい下りもキツい、平らになれば足下悪いというのはなかなか厳しい。


さすがにみんな疲れが出てきたのか、下山中にIさんが木道の階段で何度か転び、Sさんは急な下りでしりもちをつき、私も岩場で足を滑らせました。気をつけないといけません。


それでも何とか無事に新高塚小屋に到着。確か17時くらいだったでしょうか。
着くなり、またしても激しい雨。まさにギリギリのタイミングでの到着でした。

屋久島・宮之浦岳縦走 2日目の2(嵐の登頂編)

おじさんから「出発してから最初の1時間と、山頂直下の1時間がキツい。あとは大丈夫」と情報をもらっていたのですが、確かに登り始めがしんどい。
雨もそれほど強くはないものの、断続的に降り続いています。
おまけに地面がぬかるんでいたり、大きな水たまりがあったりして、足下にも特に注意しないといけない。
今回の山行で初めて使うダブルストックにだいぶ助けられました。


出発から2時間ちょっとで、高盤岳展望所に到着。
本来ならば、文字通り高盤岳が望めるはずなのですが、真っ白で何も見えません。
水休憩のみで早々にリスタート。


程なくして小花之江河に。
このちょっと先の花之江河と合わせて、日本最南端の高層湿原なのだとか。
見た感じは日本庭園のような雰囲気ですが、天候のせいなのかカエルがたくさんいて、むしろカエルの巣窟のような印象です。

小花之江河
小花之江河


さらに進んで花之江河へ。
ここは小花之江河よりもかなり広いです。天気が良ければもっといい眺めだったろうに、と3人とも残念がりながら、時間のこともあって早々に出発。


このあたりから地面が土ではなく岩が中心になってきます。
岩の上を雨水が流れていて、川のようになっている場所も出てきました。
ああそう言えば、水はすぐに下へ流れるんだったなと、昨日のバス運転手さんの話を思い出します。


やがて投石の岩屋に到着。
団体さんがお昼を食べている脇を「失礼しまーす」と通ろうとすると、その先は行き止まり。
あれれ?と3人でハテナマークを頭の上に浮かばせていると、団体さんのひとりが「宮之浦岳ならこっちだよ」と、横の岩を指差します。
よく見ると岩の隣には倒れた標識があり、その先には細くて急な登り道が。
そして、その道の上からは水がじゃばじゃば流れてきていて、滝かと見まごうほどです。


「この滝を登っていくんですね」
「うん、この滝を登っていくんだよ」
「どうも失礼しました」
「奥のほうへ進んでいくから、君たちも休憩するのかと思ったよ」


そんなこんなで、図らずもちょっとした沢登りをしながら、さらに先へ。
すぐに投石平に着き、ちょうどお昼の時間ということで休憩することになりましたが、ここはもろに吹きさらしなので、さらにちょっと進んだところにある岩陰にザックを下ろします。
SさんIさんはおにぎり、私はゼリーとカロリーメイトで手早く補給。
雨さえ降っていなければ、投石平で座って休憩できたのですが、まあ仕方ありません。


このあたりからはすっかり稜線に出て、登りも若干緩やかになります。
足下もちゃんとした木道が整備されていて歩きやすい。まあ今日のような時は雨で滑ることもあるので注意が必要ですが。


翁岳の下を通過したあたりから再び急な登りになってきました。
淀川小屋のおじさんが言う「山頂直下の1時間がキツい」は本当だったわけです。
3人ともやや無口になりつつ、たまに出てくる標識の「宮之浦岳 ○km」という数字が少しづつ減ってきているのを励みに、黙々と登っていきます。


そして栗生岳を過ぎ、14時を回る頃、ついに宮之浦岳山頂に到着。
「やったー」と喜ぶ3人ですが、やっぱりここもガスっていて何も見えません。
おまけに一時止んでいた雨がまた降り出してきて、しかも真横から風とともに吹き付けてくるのですからたまらない。こんなところに長居は無用と、早々に立ち去りました。


宮之浦岳山頂
宮之浦岳山頂

屋久島・宮之浦岳縦走 2日目の1(淀川小屋の逡巡編)

JamesMaki2010-09-01

*前回までのあらすじ*
小屋が水没するんじゃないかと思うほどの豪雨が降り続く中、夜を明かした我々3人。
今日の天気はどうなるのか?
果たして今日宮之浦岳に登れるのか?


**********************


朝5時過ぎくらいに目が覚めました。外はまだ暗い。
耳をそばだててみると、いやそばだてるまでもなく、はっきりと雨音が聞こえてきます。
うーん、まだ降ってるよ…。


朝食を作りつつ、相前後して起きだしてきたSさんIさんと「どうしますかねー」と相談。
ただ、昨夜に比べるとだいぶ雨は弱まってきたような気が。


やがて、外で何やら話し声が聞こえてきました。
表へ出てみると、2組4人の登山者が小屋の入口で休憩中。
2人は宮之浦岳への日帰り、もう一方の2人は我々同様に縦走のつもりで来たが、天候のことがあるのでどうしようかと思っているとのこと。
聞いてみると、台風は島の西側をくるくる旋回しながら北上中らしい。
日帰りの2人は程なくして出発していきましたが、縦走予定の2人は泊まっていたおじさんに「ひとまず休んでいきなよ」と促されて、小屋の中に入ってきました。


2人が朝食を摂っている間、我々は出発・待機どちらでもいいように、とりあえず荷物をまとめにかかります。
そのうち、どこから聞いたのか、「台風は抜けたようだ」とおじさんが言い出しました。
今日の早いうちは雨は残るが、午後からは回復するかもしれない、少なくともこれ以上悪くはならないのでは、とのこと。
それを聞いて「じゃあ、行けるところまで行ってみますか…」と我々。
稜線に出ると風が不安なものの、樹林帯ならそれほど関係ないだろうし、これは駄目だと思ったら引き返せばいい。


先ほどの2人は、装備を見たおじさんに「ちょっと危ないんじゃないか」と忠告されたらしく、結局引き返すことにしたようです。
おじさんたちもこれから下山するので、一緒についていくことにして、午後からでも白谷雲水峡に行ってみるとのこと。


2人とおじさんたちを見送り、我々3人も支度を整えて小屋を出発。
結局、8時半頃になりました。